週報 2021年02月27日
最近駄文にゅうすを読んでいていいなと思ったので、ニュースサイトとはいかないまでも、読んだものについて記録および感想を書いていきたいと思う。
技術
初のオンライン開催となったCES、音声SNS「Clubhouse」の人気と課題:2021年1月に最も読まれた10本のストーリー | WIRED.jp
学会やコミケもそうなのだけれど、展示会をオンライン代替すると「情報の大海に飲み込まれてしまう」のが難しい。ある種「情報を制限して少ない情報に浸る」ことがインターネットを使った媒体でどれほど可能なのか(どれほどやりやすいようにインセンティブ設計できるのか)。
私はClubhouseをやっていない(自分の声が好きではない、そもそもAppleの機器を持っていない等が理由)のでこの怪しげな狂奔には参加していないが、「FOMO」とか言われると似たような媒体は知っているかなと思う。
一つは、Pawoo。これはMastodonインスタンス(サーバー)の一つでPixivが運営していた(現在は譲渡済み)ため絵描きが集まっているところであるが、有名なイラストレーターや漫画家が他では言えないような愚痴とかを書いているのを良く見る。基本は公開だしログも残っているのだが、#exp10m
というタグをつけると10分で投稿が消えるなどの機能があり、音声ではないものの即時性を持たせることが可能。ツイッターと同様に誰でも投稿できるのだけれど、私は絵を描かないために有名人の投稿・会話を一方的に眺めるだけになっており、たぶんClubhouseと似た使い方になっている。
もう一つは、VTuberのゲリラ配信でアーカイブが残らないもの。アーカイブを残してほしいと思う一方で、残らないからこそ路上ライブを聴いてるみたいなプレミアム感が良いのかもなと考えたりしていた。経験の一回性。まあYouTuberでなくVTuberとなると、これはもうClubhauseの音声配信とほとんど変わらない気がする。
質の高い技術文書を書く方法 - As a Futurist…
箇条書きは短文で済むので文書を速く仕上げることができる一方で、行間を読むことを読み手に強制する。例えば、インデントの意味や、項目の順番の意味、実は 2 つの項目がつながって一つのことを書いている、などなど。
この点は以前もAmazon関連で触れられているのをみたことがあり、少し特徴的な気がする。個人的には階層付き箇条書きが好きで結構使ってきたのだが、それが読み手にとって負荷が高いなら考えもの。ただ、私は、日本語ならまだしも英語でかつそこが重要かわからない状態で整った文章を読みたいとは思えない(言語的な巧拙についてのユニバーサルデザインもあってよいか?)。誤解のリスクと読解のコストのバランスが必要であって、記述内容の重要度で使い分けるとよいのかも。
マイクロソフトの量子コンピューター計画が後退? 明らかになった「技術的なエラー」の深刻度 | WIRED.jp
MSは大手IT企業で唯一トポロジカル誤り耐性量子計算の実現を掲げていた印象で、期待していたので残念。
Phys. Rev. Lett. 125, 260404 (2020) - Hidden Variable Model for Universal Quantum Computation with Magic States on Qubits (arXiv)
量子計算(有限次元の量子力学)は確率分布の確率的な発展(つまり隠れた変数理論)によって記述できる……と非常に強い主張をしているように見えるが、基礎知識が足りなくてよくわからない。
ネット企業守る米通信品位法、どう改正されるか - WSJ
Microsoftがリモートワークが当然になった時代の新しい社内イントラネット「Viva」を発表 | TechCrunch Japan
Firefox 86 Introduces Total Cookie Protection - Mozilla Security Blog
サイト毎に保存するクッキーの保管場所を分けることでサイトをまたいだ個人の追跡を防止する “Total Cookie Protection” という機能(普通名詞では State Partitioning とよばれる)を導入するという話。Firefox 86以降、設定で「強化型トラッキング防止」を「厳格」にしている場合に有効になる。
#japanpm Japan.pm 2021でhotwireをMojoliciousから使うLTをしてきました - ぱいぱいにっき
社会
英国はインド太平洋に「回帰」するのか | ウェストエンドから | 服部正法 | 毎日新聞「政治プレミア」
第二次大戦後の大英帝国の崩壊(植民地の独立)以降、英軍がスエズ運河以東から撤退するなど英国はグローバルな大国から欧州との協調路線へと転換していた。しかし、近年のブレグジットや香港問題での中国との対立から、TPPへの参加や対中包囲網的への参加などアジア方面へと回帰するのではないかとの趣旨の考察。
パンデミックの時代を経て、都市の価値は再現性の低い「神秘性」に宿る:Placy鈴木綜真連載『Cultivating The CityOS』第3章 | WIRED.jp
「都市は分散と集中を繰り返してきた」として将来的にどちらかに偏ることがあり得るか等。コロナ禍に対する都市論的な考察は面白そう。
書評|アメリカ新自由主義の象徴であるコーク兄弟はいかに富を築いたか?|"Kochland" by Christopher Leonard - カタパルトスープレックス
【独自】「碍」常用漢字追加は見送り…文化庁方針「障害表記が一般的」(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース
「障碍」という表記は結構見る気がしていたので、17年の内閣府調査で「障碍」がふさわしいと思う人の割合が2.5%しかなかったというのは少し意外。
法令や国の公用文は常用漢字に従う必要があるものの、地方自治体や民間団体が「碍」を使うのに制限はない。兵庫県宝塚市は19年4月から公文書などの表記を「障碍」に変更している。
というのは知らなかった(公文書は自治体のものも常用漢字に従うべきものだと思っていた)。
その他
キャビア量産へ「チョウザメ全てメス化」成功…餌に女性ホルモン : 科学・IT : ニュース : 読売新聞オンライン
Big Brother - ニコニコ動画
飯島ゆんさんを主人公にした核P-MODELの曲「Big Brother」の音MAD。シャミ子版(Big Brother - ニコニコ動画)が好きなので繰り返し見ていて、そこからタグ検索したら最近投稿されたこれが出てきた。Big Brother音MAD、やたらクオリティが高いものが多いのはなんなのか。ゆんさんについてはわるい記事(飯島ゆんのようにしか生きられない - 当たり判定ゼロ)を読んで以来そのイメージにひっぱられがちだったのだけど、久しぶりにこうやって虚心坦懐に存在を見つめるとかわいい。最近は『NEW GAME!』をぜんぜん追っていないので、そろそろ追おうかな。
ところで、これらは単体で見れば主にきらら系漫画のMADなのだけれど、リスペクト元を参照すればわかるように背後には「クッキー☆」方面の影響がある。それこそオーウェルから始まり平沢進を通って積み上がってきた文化的影響のダイヤモンド継承の先にこれらはあるわけだが、その途中に淫夢やクッキー☆があるためにその歴史が後から理解できなくなってしまうのではないかという懸念がある。ここ十年のインターネットの文化で、そういったお行儀のよい場では口に出すのが憚られるようなものの直接的・間接的な影響を受けていないものはほとんどないように思われるが、これらについて人々がタブーとして口を噤んでしまえば、文化に関する手がかりが失われてしまう(文化ではなくとも、例えば昨年相次いだ大学などへの爆破予告はどうも恒心教界隈の内紛が原因らしい(証拠はない)のだが、そういったことについて一般紙の記事が報じているのを見たことがないから、これは「原因不明の爆破予告急増」が歴史的な事実となるのだろう)。Fateやなのはについて「元はエロゲ」というネタがあったりするが、AV(の無断転載)やネット炎上といったものはエロゲよりもなお本などの後に残る形で記録されることが難しいはずだ。確とした形で記録されない歴史はどうなるかの『1984年』的現実がここにあるように思われる。これら以外にも語られないインターネットの常民史は様々にあるだろう。それが悪とされずに語られて、今と未来の人々を戦慄させてほしいものである。
東方Project 第18弾 東方虹龍洞 〜 Unconnected Marketeers. | 東方Projectよもやまニュース
輝針城以降やってないのでやらないと……。
日本人のための日本語文法入門 | 現代新書 | 講談社(書籍)
紹介されている文法自体はなるほどと思えることが多くて面白かったのだけど、出典が細かくついてるわけではないので「それは通説なのか著者の主張なのかどっちなの?」と思うことが多かった。特に日本語は自然中心で云々の文化論とか。わかりやすくを第一にしている新書なのでそんなことを求めるなといえばそれまでだけど、少し柔らかすぎた(参考文献リスト自体は最後についている)。
「古典文法との連続性を重視した国文法(学校文法)」ではなく「日本語を知らない外国人に現代日本語を教えるときに使える日本語文法」を書くと最初に断っているとおりの内容。いわゆる辞を、態(ボイス)、相(アスペクト)、時制(テンス)、ムードを表すものに分けているのがおもしろい。西洋文法の概念で無理に説明しているのではと思う節はあるが、けっこううまく説明できてるものなのだなと感じられる。例えば受動(~られる)はともかく、使役(~させる)や可能(~られる)、自発(「~が見える」「~が聞こえる」のような動詞)も態としてとらえることで、前につく語の格が普通と異なることを説明できるのは面白いなと(「彼は納豆を食べる」を可能の態にすると「彼は納豆が食べられる」になるとか)。あと、「主題の『は』」は言葉だけ知ってたけどその指す意味を知らなかったので、知れて良かった。
一方で、やはり歴史的な流れの部分は捨象されている感がある。例えば、自動詞と他動詞の対(「開く」「開ける」とか)があったりなかったりするという話があるのだが、その組は語源的には同じ語が派生しただけなのでは…?とか思ってしまう(実際はちゃんとした裏付けがあるのかもしれないが、触れられていない)。古典日本語も現代日本語も一続きのものと思っているので、そういう歴史的な流れもちゃんと説明できる文法理論であってほしい。