技術書典18に出展しました(しています)
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概要
技術書典18に出展しますという記事に書いたように、当サークルは技術系同人誌即売会「技術書典18」にサークル参加しています。
オフライン会場は先日6月1日に池袋で開かれました1。会場で当サークルのブースに来てくださった方々、ありがとうございました。
技術書典はオンライン会場もあり、こちらは本日6月15日までです。弊サークルの頒布物も電子版がオンライン会場に出ておりますので、興味があれば覗いてみてください。紙版のほうはメロンブックス様に委託しています。

図1
会場にあった技術書典18の幕
感想など
部数
先日の記事にも書いたように、今回は委託していた在庫を引き取るのに失敗し、オフライン会場には『詠ちゃんと学ぶ同人誌組版の技術』を新たに印刷して持っていきました。前回の冬コミでの頒布実績は14部だった2のですが、印刷単価を考えるとさすがに10部では厳しいので、思い切って30部刷りました。明らかに過剰と思われる量であり、帰り道どうしようかなと思っていたのですが、なんと完売しました。ほんとにびっくりです。やはり、そもそも技術同人誌に興味がある方しか来ないイベントなので、手に取ってくださる方の割合の高さを感じられました。

図2
「完売しました」と一度は書いてみたいという節はありますよね。その後に買いに来てくださった方がいて、お渡しできずとても申し訳なかったですが……。
準備
準備の面では、コミケと比べてやや搬入が難しく3、届いているのか少し不安でしたがちゃんと届いていました。あと、頒布物の事前審査が必要なことに直前まで気づいておらず、急な審査をお願いする形になってしまい、運営さんにはご迷惑をおかけしてしまいました。ちゃんと隅々まで説明は読みましょう。反省です。
現地
現地についてからは非常に快適でした。なによりスペースが180cm幅で広い。2脚椅子を並べても余裕の広さです。会場もビッグサイトや幕張メッセのような広大な空間ではなく比較的「室内」的な場所なので、空調がきちんときいていて体調的に不安に思うことはありません。唯一困ったのは会場が地味に広くて出入り口がそれぞれ1箇所ずつであったので、お手洗いに行ったり飲み物を買いに自販機に行ったりするときにまあまあ遠い気がしたことくらいです4。次にサークル出展することがあれば、大きめの飲み物ペットボトルを用意しようかと思います。
当サークルは同人誌即売会にサークル参加するのが初めてではないのですが、180cm幅の布を持っていないので今回「完全手ぶらセット」を頼みました。スペースに並べるのに必要な物品(布や値札など)を、運営さんが用意してくれるサービスです5。出展無料なのに至れり尽くせりすぎます(スポンサーの方々、ありがとうございます!)。
また、決済は運営側で用意してくださる「技術書典公式かんたん後払い」というキャッシュレス決済でした。以前一般参加で技術書典に来たときにはキャッシュレス決済があることに驚いたのですが、サークル側としてはかなり便利ですね6。防犯上も安心ですし7、何よりお釣りの準備で頑張らなくてもいいのがよいですね。ちなみに、現金で払いたい(またはアプリが動かなかった)という方も数人いましたので、そのときは現金でそのまま受け付けました8。
お話
あとは、そうですね、ブースに来ていただいた方といろいろ話せたのが楽しかったです。LaTeXを知っている方が多いのは想定内ですが、GStreamerに興味がある方も結構いらっしゃった9のが面白かったです。
一番多かった質問は「LaTeXは使ったことがあって、大学の頃苦しんだ記憶があるんですが、今もあるんですね~。LuaLaTeXっていうのはLaTeXとは違うんですか?」みたいなものでした。もちろん聞かれたら喜んでオタク解説をするわけですが、なかなかLuaLaTeXの普及が進んでいないのかな-というのは少し残念なところ。とはいえ、大学を出たらそれ以降使わないという方が大多数だろうというLaTeXの特殊な事情を考えると難しいのかもしれません。
興味深かった質問に「これ(LuaLaTeX+Pandoc)が同人誌をつくる簡単な方法なんですか?」というものがありました。『詠ちゃんと学ぶ同人誌組版の技術』に書いたものは、もちろん経験上かなりうまくいく比較的シンプルなワークフローではある(と思う)のですが、一番簡単というと嘘になると思われます。真に簡単にといえばWordなどで作る手がありますし、非WYSIWYG的にGit管理でやれるようなものの中では、たぶん『技術書をかこう! ~はじめてのRe:VIEW~ 第3版』10に書いてある通りにTechBoosterさん謹製のRe:VIEWテンプレートを使ってやるのが一番簡単そうに見えます。ということを踏まえていうと、私が本に書いた方法の売りは「体裁の調整がしやすく、自分で納得のいく本を作りやすいこと」と、「広く使われている要素技術(Pandoc、LuaLaTeX、Lua、シェルスクリプト、Docker等)の組み合わせであるため、ワークフローの拡張や修正がしやすく、一度身につけておくと息が長く使えそうであること」あたりかと思います。……といったことを答えました。
なお、前述のTechBoosterさんのRe:VIEW本ではGitHubでCI/CDするワークフローが紹介されていますが、私の書いた本のほうではこういうものは書いていません。手元のフォントを使って組みたいという事情もあるのですが、それ以上に私のワークフローは「(例え執筆者が複数いたとしても)執筆者はMarkdownの原稿のみを書いて、その後の体裁の調整といった部分は1人の編集者に任せる」というのを想定しているという思想の違いがあります。執筆者が体裁を確認するのは初校が上がってきた後のPDFでの著者構成のときで十分で、常に組み上がりを確認する必要はないだろう、といった風な。
別のサークルで合同誌を執筆/編集していたときがそういう流れだったので、これに慣れてしまっているという面もあるのですが、一人で執筆と編集をしている今でも執筆フェイズと編集フェイズはできれば分けたいと思っています。そこに大層な理由があるわけではなく、個人的に執筆のときに編集のことを考えてしまうといつまで経っても文章が書き上がらないからです。執筆と編集で必要になるちから(MP的な)が異なっているような気がするので、文章を書けないときには気晴らしに先に編集に手を出すこともありますが。その点、詠ちゃん本では物語の構成上文章を書く前に編集の話をするという形になってしまっており、少し反省しています。
買う側としては今回は少ししか回りませんでした。時間がなかったというわけではなく、最近積み本や本以外の積みコンテンツが多すぎて、買っても読めないことを危惧したからです。という事情はあるのですが、組み込み系・電子工作系の本や工作物を見るとわくわくするというか眩しく見えるというか刺激を受けるというか、というのがあってそちらでも十分に楽しみました。ああいうのを見ると「“本物”の技術だ……」となるんですよね。
まとめ
とても楽しかったです。運営さんも一般参加の方々も、サークルさんも皆さんありがとうございました!
当サークルの本を買ってくださった方は、知見を何らかに活かしていただければ幸甚の至りでございます。
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本当はイベント後すぐに記事を書くつもりだったのですが……。 ↩︎
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増刷をかけたときは10部以下だと思っていたのですが、今この記事を書くために記録を探したら14部売れていました。 ↩︎
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『詠ちゃんと学ぶ同人誌組版の技術』については栄光さんに印刷をお願いしており、コミケの場合は直接搬入に対応しているのですが、技術書典の場合は直接搬入に対応しておらず宅配搬入という形になりました。まあ直接搬入に対応しているのは恐らく一部の大きなイベントのみであってそちらのほうが特殊だと思うので、今回宅配搬入のやりかたを学べたのは経験としてよかったです。 ↩︎
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これは会場が細長いために現実よりも狭く感じる錯覚によるもので、結局コミケとかより実際は全然近いのではという気もします。 ↩︎
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かわいい二次元の女の子の売り子さんもつきませんか……??? ↩︎
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私はこの手の新しめの技術にとりあえず懐疑的なスタンスを取りがちなのですが、だいたい使った後は便利さの前に敗北しています。 ↩︎
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今回は友人に売り子として来てもらったので2人いましたが、1人だと席を立つときに少し心配ですから……。 ↩︎
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現金払いだと技術書典アカウントとの紐付けがないので、電子版が技術書典のサイトからはダウンロードできなくなるという欠点があり、その点の説明は少し大変でした。当サークルのものは技術書典サイトからだけでなく紙版に記載のURLからもダウンロードできるようにしてあるので、実質的な問題はないのですが。 ↩︎
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GStreamerを仕事で使っているという方もいらっしゃって、「プロだ!」と言ってしまいました。いるところにはいるのですねぇ(感慨)。 ↩︎
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私はこの本をこの前の冬コミで買ったあとしばらく積んでいて技術書典の少し前に読んだのですが、この本をつくっているTechBoosterの @mhidaka さんが技術書典の主宰だと知って驚きました。表紙の依頼のやり方とかイベントで準備するものとかも書いてあって、充実した本です。部数決定のところに「技術書典における発行部数は50~200部、最頻値は100部です」(17ページ)と書いてあり、「これを読んで初参加で100部刷ったら死にませんか???」というところだけは気がかりですが……。 ↩︎